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琥珀王子と瑠璃色灰かぶり姫

第15章 届かない天空をのぞむ*




シャワー室はキッチンの側の隅に設置されているようだった。
大体の位置は目測で把握していたものの。

現在。 再び仰向けに引っくり返された透子は、首元やら胸元に大量に振り続けるキスに戸惑っている。

「静さ…っ? 離……フザけないでください」

「ふざけちゃいない。 キミのけしからん姿のお陰で枯れてた性欲が戻ってきただけだ」

そんな間が空いたのはせいぜい一、二週間のことだろうに。

「で、でもシャワーを浴びなきゃ」

透子が横浜から帰ってきてホテルで一応汗は流したものの。
車中や直前の自分の状態を考えるとやはり身綺麗にしたい。

床に重なっている両手指繋ぎ状態の二人は一見仲むつまじげ。
だがその実透子の手指はありったけの力をこめて抵抗を試みていた。

「そうやって抗われると出会った頃を思い出すな? ちなみにキミが浴びなくとも俺はむしろ興奮するから心配ない」

愛情のこもった眼差しで偏執的な発言をする静をえいっと押しのける。
途端、勢いで床のファーの上に静が頭を突っ込んだ。

「全く。 もうちょっと枯れたらどうなんですか」

不機嫌そうに髪を掻きあげ身を起こした静がブツブツ不平をこぼして浴室に向かうまで。

「………ふう…相変わらずムードのない。 俺が全部舐めとってあげると言っているのに」

透子は彼と一定の距離を取りつつ警戒し続けていた。

それで脱衣所があるのかは分からないが、突然その場で静が脱ぎ始めたので驚いた。

「脱ぐなら中で!」

「ここまでやっといて今さらか」

二度はあ、とため息をこぼし不可解な顔で静が扉の内側へと消えて行った。

透子としては湯舟に浸かったことはあれども、誰かとシャワーを浴びたことはない。
目黒にいた時も着替えは別室でしてもらっていたし。
大体、静があけっぴろげ過ぎるのだと思っている。

それは置いといて、だ。



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