第15章 届かない天空をのぞむ*
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とはいえ。
足を踏み入れ静に床に降ろされた瞬間、透子の心が浮き立った。
そこはパッと見た感じ広いワンルームのコテージのようだった。
明かりをつけると丸のままの木造りの暖かみのある内装に、高い天井にはロフトと大きなファンがある。
「………すごく、素敵ですね」
目隠しで仕切ったキッチンは一通りのものが揃っていた。
誰かがあらかじめ温めておいてくれたのだろう。 アンティークな雰囲気の暖炉には燃えさしが残っており、静が本体横についている取っ手を下ろした。
「それはなんですか?」
「空気調整。 これで足りなくなったら薪をくべればいい」
するとみるみるうちに炎が大きくなり、パチパチ火が弾ける耳に心地好い音がしんとした部屋に響く。
ゆらりゆらりと揺れる炎の形は大きさを変え先細って消えたりまた生まれたり。
そうしながらも『つる』のように周囲を巻き上げて徐々に太くなっていく紅の束に、透子が珍しげに歓声をあげた。
「わあ………」
ずっとでも眺めていられそうだと思った。
立ち上がった静が、平たい形のポットに水を入れ暖炉の上に置きながら話しかけてきた。
「加湿に湯を掛けておこう。 あとはチーズを軽く焼いたり。 ピザやローストチキンも作れるな。 ここは滅多に使わないが、こじんまりとしていてキミが好きそうかと思っていた。 気に入ったか?」
「はい、とても!」
再び暖炉の前に座って並び、反射で紅く染まった顔を互いに見合わせるとどちらともなく笑いがもれた。