第15章 届かない天空をのぞむ*
両頬を手でおさえ、火照る顔を冷やそうとするがどんどん熱さが体内をめぐっていく。
「Lepidium Meyenii、Aminosäure、その他」
ポツリと呟いた静だったが聞いた事のない単語だ。
「つまりこれらは合法な媚薬成分」
袋の入り口を折り曲げ、静はなぜか大事そうにそれを反対側のポケットに仕舞った。
「え」
「うちには医薬を扱う社もある。 アミノ酸ぐらいは分かるようにしておきなさい。 勉強不足だ」
「う………」
やっぱり厳しい。
というか。
分かってたんじゃないの、この大嘘つきの詐欺師。 彼のこんな所は京吾とソックリだ。 と透子が思う。
「ん…っ」
それよりも、体が熱いのが止まない。
美和も何をしてくれやがるんだろう。
くう、あの中でまともなのは三田村だけということか。
透子の脳内に女神のように清浄にキラキラと輝く三田村が浮かんだ。
はふはふと色めいた息を繰り返す透子を横目で見、静が唇を湿らせながら彼女の感触の記憶を舌で追っていた。
「我慢が出来なくなったら言うといい。 いつでも鎮めてやるから」
「そんなの、け、結構…ですっ!」
「そうか。 ではそのままシートに恥ずかしい染みでも作ってる事だな」
「へ、変態、スケベ、意地悪、変態、どエロ」
心なしか、下着が冷たいような気がする。
体を自分の両腕でギュッと抱きしめ、透子がありったけの拙い悪口をループさせて並べてみる。
「ありがとう。 それは褒め言葉だ」
前を向いたままの静がフフと愉しげに笑った。