第15章 届かない天空をのぞむ*
それはやはり桜木達の言ったとおり、静からの呼び出しだった。
ニコニコして手を振る二人にドア口で見送られ、透子は顔を赤くしホテルの部屋を出た。
コートを羽織りながら、彼と二人きりでゆっくり出来る機会なんて、随分久し振りなような気がした。
開口一番どう言われるんだろう。
廊下をぽてぽて歩き透子は考えていた。
「余計なことを」と怒られるんだろうか。
「無茶をするな」と怒鳴られるんだろうか。
笑ってくれるといいな。
嬉しい静だといいな。
いつもそんな彼を見ていたいなあ。
一階のロビーに着き、ぼんやりとホテルの庭を眺めている様子の静の後ろ姿が視界に入った。
一応は着替えてきたようで、ラフなダウンジャケットからジーンズに包まれた長い足が伸びている。
夜はくすんで黄身がかってみえる髪は少し長くなっていて、変わった髪色とスタイルの良さだけでもチラチラと周囲の視線を奪う。
ああ。
私、この人が大好きだ。 と、改めてそう思う。
「静さん………お久しぶりです?」
なんと言っていいか分からなく透子が声をかけたが、くるりと振り向いた静の頬はなんと濡れていた。
「あ、えっ!!???」
これは想定外だ。
雨でも降ってたとか。
真っ暗な外をみるといやそうじゃない。
こちらの驚いた顔に気付き目元に手をやった静がまた顔を赤らめた。