第14章 愛すべき者たち
「それは置いておいて。 白井透子と申します。 私を静さんの専属の秘書にして下さい」
「静の?」
彼は京吾のようにそんな存在を置かない。
それが現状の彼のやり方なのだろう────が、それにしても無理がある。
その辺りの見解は、透子も京吾に言われる前に感じていた。
加えて静の恋人である自分が彼の傍にいる、それを許される方法はこれしかない。
「もちろん、いくらもの会社をまとめる彼の傍に就くわけですから、皆さんに認めていただこうかと。 本日は面接を受けに来たつもりです」
「君に一体、何が出来るのだね。 確か高卒出の事務上がりの職歴しかない────」
周りがザワザワとし始め、静の近くに控えていた美和がチョコチョコ歩いてきて透子の隣に座る。
「ワタシは静様の直属で医師として働いている美和と申しマス。 祖父は日本医師会の理事をしている美和秀樹デス。 透子様のIQテストの結果は162。 なんと標準偏差で七万人に一人の数値なのデスね!」
それからゴソゴソとナップサックの中を探り、透子がクリアファイルに挟んだ書類や証明書の類いをズラズラと畳の上に並べ始める。
「語学はもともと三カ国語を話せましたが最近二か国語を習得しましたし、こないだ秘書検定一級も受けました。 ちなみに中学の習字コンクールでは特賞です」
資格関連のこれらは全てホテルで猛勉強していた成果である。