第14章 愛すべき者たち
突然下座の入り口から現れた透子に、その場にいた人間が呆気に取られた顔をし注目が集まった。
めいめいが着物姿か正装をしており、奥の上座にどんと構えて座っている八神と静も例外なく和服である。
紋付に羽織りの静も眩しいなあ。 透子はそんなことを思う。
「………誰かね? こんな娘は呼んだ覚えがないが」
しらっと口に猪口を運ぶ京吾は予想通りだ。
畳を踏みしめて進んで行くと、「場違いな」「会長も知らないと」「あの格好」などと、戸惑いや嘲笑の声が両脇からヒソヒソと聞こえてきた。
三十代から六十代まで、いずれも結構な肩書きのある人達なんだろう。
こんな中で若い彼は毎日仕事をこなしていた。
初めは驚いていた静が、心配げな不安そうな表情で立ち上がろうとしていた。
大丈夫、と言いかけた透子が少し考え、京吾らから少し離れたその場に正座をした。
「娘。 何の用向きかと訊いている」
「ええと。 囚われの王子を救いに……とか?」
「何?」
一瞬目を見開いた静とそれから西条が横を向き、思わずといったようにプッと吹き出す。
特に笑い上戸の西条は止まらない様子で、ひたすらにクククと肩を震わせている。
そんな彼を肘でドスッとつつき、三田村が無言で咎めていた。
「ここは子供が来ていい場所ではない。 ふざけに来たのなら」