第14章 愛すべき者たち
横浜邸はどちらかというと国立に似ている。
京吾はおそらくヨーロッパ的なものが趣味なんだろう。
算段によるとだ。
西条が三田村を伴い来客に混ざり、静と話があるからと時間を引き伸ばしている予定。
「いざとなると『婚約者がなぜかどこぞの車に轢かれそうになって怪我をしてしまいましてねえ。 痛むそうなのでもう少しゆっくりさせていただきたいと』とか言ったりして。 そしたらご老公もちょっとは焦るのかなあ?」
などと、ハッハッハと西条が笑っていた。
知らない間に三田村が婚約者にされちゃってるし。
わりと豪胆な人である。
二階の、来客用の大広間は和室と聞いている。
階段をおりた透子は、なるべくと人とかち合わないよう身を隠しながら歩を進めた。
そこで今頃ここに残ってるのは京吾と静、主だった会社重役の面々、それから西条に三田村と静個人の世話役である桜木に美和。
リクルートスーツ姿の若い女がいきなり訪ねると浮きまくりだろう。
すうっと息を大きく吸った透子がふすまの取っ手に手をかける。
「皆さまお正月、あけましておめでとうございます!」