第1章 お見合い、のち災難
「ご丁寧に、どうも。 白井 透子(しらいとおこ)と申します」
「透子さん。 さすが名だたる家柄の方だけあって、噂どおりにとても素敵な方ですわね」
隣席から義母がいつもの余所行きの笑顔を向けてきて、透子も曖昧にそれに同意した。
「はい。 …お義母さん」
それにしても、向こうには付き添いの人は居ないのかな? 透子が不思議に思う。
彼女自身の身分は別にしても、良いお家同士のお見合いの席にしては簡単なものだ────とはいえ、自分自身もこんな席は初めてのこと。
向かいの男性が時おり透子をちらっと見るので、その度に笑いかけようとした。
でもそうすると、すぐに目を逸らされてしまう。
そんな彼はどことなく顔を赤らめていた。