第14章 愛すべき者たち
いっそ額に手をあて、透子がブンブンと首を横に振って既視感を吹き飛ばす。
「ま、まず謝罪とか。 勝手にというか、そもそも八神さんが私に悪意があってあの人達がこんな事をしたんじゃないんですか!?」
前を向いたままの京吾が口を聞くのも煩わしそうに言う。
「謝罪は今態度で示しただろう。 代わりを探すのも骨が折れる。 しかし以前のアメリカ人の子供を勝手に攫ったことといい、近頃はあやつらの言動にはわたしも目に余っていた所だ」
「それは自業自得ではないでしょうか。 エマさんはわざわざ日本まで会いに来られたのに」
「それもわたしには知らされなかった。 先日連絡を入れておいたが」
「それでは、そのうちにお会いに?」
と、透子が期待を込めた表情で京吾を見詰める。
すると京吾がプイ、と反対方向に横を向いた。
「………君には関係ないだろう」
こ、このやろう。
ヒヒじじい、とつい透子も言いたくなった。
「いちいち静のように細かな指示をしていたら過労死するわ。 わたしの動向や顔色から察し動ける者ではなくてはな。 まあ、君には分かるまい」
「………そうやって、言うことを聞かない者を簡単に切り捨てて?」
「命令を聞いてしか動かぬ者など要らん。 と、こんな話をなぜ君などと」
ふう、と京吾は先程から面倒そうな態度を崩さない。
しかしこんなのは慣れっこだ。
いっそ懐かしささえ覚える。
それでも『彼』にそうした仕打ちは見過ごせない。