第14章 愛すべき者たち
どうなるんだろう、何をされるんだろう、とさっきから妙な汗が引かなかったが、あえて隅に押しやっていた悪い予感が当たった。
「………そんな乳臭い女のどこがいいのか分からんが。 わたしの話が先だ」
「分かりました」
通話を終えた前の二人がしてやったりとした顔で頷き合う。
小分坂の方に視線を向けるとひたすらオドオドして前方の二人の方を見ているばかりだ。
おそらく彼は透子を呼び出すために使われただけなのだろう。
だがこの様子では小分坂に助けを期待出来そうにもない。
さっきからチラチラと透子をバックミラー越しに見てくる運転席の佐藤という男の目も気味が悪かった。
「………八神さんは私をどうするつもりなんですか」
「そりゃあな。 命までは取らねえよ。 足や腕の一本でもいただいたらビビって逃げ出すかと思ってたんだが、な?」
佐藤がチラリと田沼を横目で見る。
「その前にせっかくだ。 俺らの場合は会長がかばってくれるから」
「た、田沼さん。 国立の事はまさか? こんなのは話が違」口を挟もうとした小分坂だったが田沼が水を差すなとばかりにピシャリとはね除ける。
「うるせえな。 お前にも回してやるよ。 そのツラじゃどうせまだ女知らないんだろ?」
「クックック。 素人の若い女なんて久しぶりじゃないか? マンコ擦り切れるまで可愛がってやるからな」
嫌だ。
こんな下品な男達の良いように弄ばれるなんて絶対に嫌だ。
品川としか言っていなかった。
何とか隙を見て逃げれないだろうか。
「品川のどこですか」
「あ? あと数分だ。 うちが持ってる使われてない店舗でな。 この手の仕事によく使う」
これでは桜木達も場所が分かりづらい。
でも、GPSがあるから………いや。 八神さん本人が直接いるような所に、そもそも来てくれるんだろうか?
桜木を京吾に会わせたくない。
ひたすら自分の迂闊さに腹が立つ。 歯噛みをして俯いている透子の手にそっと指が触れる。
小分坂が口をパクパク開けて何かを言おうとしていた。
『ゴメン』と『ダイジョウブ』………?
気持ちは有難いがこの状況で、何がどう大丈夫だというんだろう?
正直慰めにもならないが、ひたすら申し訳なさげな彼の様子に透子が口の端だけを力なく上げた。