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琥珀王子と瑠璃色灰かぶり姫

第14章 愛すべき者たち



ホテルを出て大通りを逸れるとすぐに車が横付けになっているのが見えた。

「お、お財布とか、大事なものは持ってきてる?」

いそいそと車に向かおうとする小分坂だったが透子が足を弛めた。
こんな車はどこにでもある────ただ美和を轢こうとしたものに似ていないか?
と、車の裏に回ってナンバーを確かめようとすると助手席のドアが空き男性が降りてきた。

スーツを着ていて、中年ぐらいの感じだろうか。
透子に向かって折り目正しく名刺を差し出してくる。

「いつもお世話になっております」

目を滑らせると確かにこれは静の会社だが、面識が全くない────と、考えてる間にその男性が素早く後部座席のドアを開け、透子を中へと押し込もうとした。

「きゃ……」

「し、白井さん!?」

「小分坂、お前も早く乗れ! く、何だこいつ。 やたら力が」

足を踏ん張り車の両脇に手を着いた透子が必死に抵抗しようとしていた。
周囲の注意を引こうと呼ぼうとなるたけ大声で叫ぶ。

「さ、桜木さん!! ホテルの前に変な男がいます」

さらに言えばリングをはめているから状況は分かるだろう。

「誰か……きゃあっ!」

背後に衝撃が走り、さすがに耐えられず先に後部座席に乗っていた小分坂の上に倒れ込む形になった。

「た、田沼さん。 白井さんに乱暴は……」

どうやら背中を蹴られたらしい、と慌てて起き上がるとその男もすぐに助手席に乗り込み、後ろを確認した運転席の別の男性と目配せを交わす。

「小分坂、抑えておけ」

また降りようとドアを開けかけるも、小分坂がオロオロしながら頼りない力で透子の腕をつかんできて、どうしようと思う前に車が発進した。

「小分坂さん! 止めて、降ろしてください!」



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