第14章 愛すべき者たち
「透子様ー? お電話は西条さんからデスか? 三田村さんの様子は」
「………心配ないみたいです。 あの、私夕食の買い物に出てきます」
「デモ、桜木さんから出歩くなと」美和が言いかけるも、「タクシーを使いますから」と言い終わるか終わらないうちに透子はホテルの部屋を出た。
どこへ………と思うも、二人に向かってどんな顔でどう話せばいいのか分からない。
そんなことをグルグルと考えながらフロントの近くを通りかがった時、何やら二人ばかりの従業員が背の低い男性と言い合いをしているのに気付いた。
男性がどもり気味の口調でモゴモゴと話している。
「さ、さっきから…僕は怪しいものでは、ほ、ホラッこうやって…社員証も。 ぼ、僕はあ、あの人の部下なんです」
どこかで聞き覚えのある────?
「あ、あっ……し、白井…さん!」
「ゴブリンさん? なぜここに」
言ったあとで失言に口をつぐんだが、自分はこの人の名前を知らない。
ただ特徴的な外観が反射的にそう言わせただけで。
会話を聞いていた従業員が横を向き、プッと吹き出したのが見えた。
「ご、ゴブリン? ぼ、僕は小分坂」
「失礼? 白井様。 こちらのお方はお知り合いで」
「え、ええはい。 どちらかというと」
曖昧に返事をすると従業員の二人はホッとしたように顔を見合わせ、「では私共はこれで」と引き下がった。
「よ、良かった白井さん。 あれから家を訪ねても出ていったとか、や、八神さんの会社を調べてもどこにも………そ、それで。 やっとここにいるって調べてくれて」
細い目が忙しなげに動き、相変わらず透子と目を合わせようとするもすぐに逸らされる。