第14章 愛すべき者たち
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それからホテルへ帰ってしばらくしたタイミングで、西条からの電話を受け取った。
三田村は治療を受けて大人しくしているという朗報のあと、やや言いづらそうに「あの車、ご老公の関連のものだね」と伝えてきた。
それを聞いた透子が驚いてスマホを取り落としそうになった。
「美和さん、轢かれる所だったんですよ」
「何でだろうね。 オレも考えたんだよ。 彼女は静の専属の部下で、身元もきちんとした優秀な医者だし。 それでさ、オレの勝手な一つの憶測だけど、彼女。 背格好が白井さんと似てるよね」
「………」
「まさかあの人がそこまでするとは思えないけど………一応。 用心するに越したことはないかなって」
「お知らせいただいてありがとうございます」透子が礼を言い、通話を切ったままその場に立ちすくんでいた。
つまり自分のせいで美和が危険にさらされ、三田村が怪我を負った────……?
それどころか、下手をしたら命を落とす所だった。
『静に近付くな』
京吾にそう言われたことを思い出す。
………国立に行ったことが原因で?
今まで静や桜木が警戒し過ぎなのだと、透子はいつもどこか他人事のように思っていた。