第14章 愛すべき者たち
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「デモ静様の父親、デスかあ。 例え顔を知らずとはいえ、生みの親より育ての親といいマスのも。 それは異なるということデスかねえ」
車内で美和が呟く。
帰りは青木が準備してくれた車で二人はホテルに向かっていた。
「そうではないと思います。 あ、否定などではなく。 私は現に生みの親を知りませんし育ての親の影響が大きいですから」
「っ……そうでしたね。 ゴメンナサイ」
小さくなって謝ろうとする美和に透子がゆっくりと首を横に振る。
「昔から私、この話で遠慮されると困ってしまうんです。 それでお相手が失言だと思われると、どう返せばいいのか分からなく。 私は良い父母に恵まれ、充分に幸せでしたから」
青木はすでに亡くなった父親の遺伝子から作られた静を『お父上』と言ってはばからなかった。
彼が生きてきた歩みは、決して否定ばかりでは無かったということだ。
「透子様?」
繋がりというものは血だけではなく。
友人だって恋人だって、最初は他人から始まっていく。
どちらが大事というわけではない。
ただこんなにも大切で心が動かされる。
それは自分の意志の元で生まれた、温かくささやかな、限りなくシンプルな優しさというもの。