第14章 愛すべき者たち
「ははは! まあ、相手の車の事はこっちでも調べるから。 また連絡するよ」
ヒラヒラと手を振り、三田村を抱えた西条が何事もなかったかのように去っていく。
「ふうむ」と、顎に指をあてた透子がうなる。
何でもいいって言っていた割に………西条さんってば意外と…?
「金持ちの本気ってのは、金を動かすか自分が動くかっていいますモンねえ」
美和も透子と似たようなことを考えていたらしい。
「………に、してもデス。 あの三田村さんに円花ちゃんっ…てえ」
「私的には…彼らの間に何が起こってハニーなのかが謎です」
美和と透子が顔を見合わせ、ぷぷぷっと笑い合う。
小さくクスクスと笑う美和は庇ってもらった事も忘れて屈託なく、そんな彼女を見ているとますます可笑しく感じた。
男性に苦手意識を持っているという三田村だが、なんとなく、西条ならばそんな彼女を救ってくれる気がする。
………そうなればいいのに。
今の歓びが悲しい過去をかき消して、優しい世の中になればいい。
透子は心からそう願った。