第14章 愛すべき者たち
「青木さん、八神さんはこう、胸の大きなグラマーな方がお好みなのですね? しかも、フェチズムといって差し支えないレベルの」
「仰るとおりで。 会長はそれ以外の女性には全く興味を示しません」
これは喜ばしいことなのだろうが、素直に喜べない自分がいる。
ちなみに透子以下のほぼほぼ平坦な胸の脂肪の持ち主である美和はこの会話には入りたくなさそうに無言を貫いていた。
「静様の異性のお好みが正反対なのは、会長に対する反抗がこじれたものなのですかねえ」青木がそんなどうでもいい事まで付け加えて透子を抉ってきた。
「あ、もしかして。 これは静さんが小さい時の写真ですか?」
次のアルバムのページをめくった透子が声をあげる。
今はただの美形王子だが、子供の頃の彼はまるで光り輝く天使のようだ────相変わらずムスッとしているけれども。
ここの庭に立っているものが一番古く、髪が少し巻き毛がかかっている。
愛らしくふっくらとした頬。 それに大きくクリクリとした瞳といい、三田村でさえ身を乗り出して「ほほう」と感心したようにそれらを一緒に眺めた。
「………他のご兄弟のものはすべて会長が処分されました」
青木が寂しげに言った。
透子が見ていたアルバムに、静の成長と共に段々とカメラ目線のキメ顔が増えてきたのもありそっとそれを閉じる。
「静様は会長────というより、気質はどちからというと亡くなったお父様の方に似ています」
たしか静からは、若くして亡くなったという優秀な人だと聞いていた。