第14章 愛すべき者たち
青木はそれには答えずに、透子の顔の下辺りに目線を落とした。
「わたくしからはあまりこのようなことは申しあげ辛いのですが」
「ええと…?」
三人が顔を見合わせ、揃って首を傾げる。
「例えば、桜木と以前の────米国人の女性。 お二人には共通点がございませんでしたか?」
「共通点といっても…美人だとか女性らしいとか、そんな意味です? とはいえ、透子様だって決して醜くは」
三田村が腕を組んで考え込み、美和がピクリと眉を動かす。
「んん? もしかしまシテ」
「亡くなったという、八神さんの奥さんのお写真かなにかはありますか?」
「ああ、はい。 そうですね!」
ぽん、と手を打った青木が、いそいそと部屋を出て行き、ややして数冊のアルバムらしきものを抱えて戻ってきた。
それをパラリとめくり、透子と美和が真剣な表情で頷く。
「なるほどなのデス!」
「理解しました」
「何をです? 確かに本国でも滅多にいない美しい方だとは思いますが」
透子の脳内に風呂場での桜木が浮かんだ。
「ふ…持っている人には分からないのですよ。 ときに三田村さん、胸のカップは何ですか?」
今は亡き、イギリス人の京吾の妻。
写真を撮ったのは三十代辺りだろうか────北欧調の上品で女性らしい面立ちに、開いた胸元からはこぼれんばかりの谷間が覗いていた。
「は、胸? 何でしょうかね。 面倒で邪魔なのでスポーツブラしか着けないのですが、学生時代はたしかEとか何とか────ああ、やっと私にも分かりました」
邪魔などと一度は言ってみたいものだ────寄せて上げてギリギリCカップの透子が、隣の三田村の豊かな膨らみを羨ましそうに眺めた。