第14章 愛すべき者たち
透子から視線を外した青木も浮かない様子だった。
「それでなんですが、ええと、あの。 桜木さんに青木さんたちが仰っていた、何やら既成事実を作れば、とか。 あれはどういう………ただでさえ私は、八神さんによく思われていないようです」
「そのようですね。 会長が静様に見合い相手として薦めるのは最低限の家柄、と。 白井家の場合ですと、白井の孫娘の祖父は元々会長の旧友でしたから」
「………もしかして、私があそこの養女のままなら、八神さんは認めて下さっていたでしょうか?」
今さらとは思うも、まだ養子離縁は済んでない。
あれが何か役に立つだろうか、と透子は思ってみたのだった。
「残念ですが。 失礼ながら、素性はすぐに解りますので。 静様が当初────透子様をお止めに入ったのも、無関係な人間を巻き込みたくないとのご配慮でした」
配慮というなら、彼はもう少し普通に自分に対して気を配れなかったのだろうか。
過去を思い出し苦々しい表情をしている透子をちらと見、三田村が口を挟んだ。
「それにしても、青木様にしては短慮なご発言かと存じます。 例えそうなったとして、透子様が八神の家で不当に扱われるのは青木様以外の全員が危惧しているところです」
「不当とはどういう意味でしょう?」
そこへ美和が言葉を繋ぐが、実質の雇用主であった青木には若干言いづらい内容らしく、その間もチラチラと彼の顔色を伺っている。
「ワタシたちは桜木さんが昔、会長にどのような扱いを受けたかを耳にしてマス。 加えて、ヒヒじ…会長の尊大な態度や女性に対する素行の悪さについてデスが…むしろ、青木様の方がご理解がアルのかと?」
「あのお方が権柄なのは確かですが、今ではずいぶんと丸くなられたのですよ。 それに、透子様なら大丈夫でしょう」
「大丈夫、とは?」
逆に透子が訊き返す。