第14章 愛すべき者たち
「でも、なんなんでしょうあれ…って、三田村さん足、引き摺ってませんか?」
と、視線を地面に向けると三田村が片足を庇うように歩いているのに気付いた。
「大した事はありません。 ここは危険かもしれませんから早く駅に戻りましょう」
「あ、あまり動かさないでくだサイ。 後でワタシが診ますから」
美和がそう言い、二人は三田村を支えながらタクシー乗り場へと急いだ。
***
「申し訳ありまセン。 ワタシを抱えた時に捻ったのでしょうか────三段階ある、おそらく重度二度の捻挫デス。 一部の靱帯が断裂していますから、後から腫れと痛みが出てくるはずです、二週間程度は激しい運動は出来まセンねえ」
青木への挨拶も早々に、三人が複雑そうな顔で互いに見詰め合ってため息をついた。
「ふう………」
ここは以前と変わらずちょっとした宮殿の趣が漂う、国立邸である。
「うちへは先日、ヘリで立ち寄って以来ですね。 しかし、その車には何か悪意を感じますなあ。 ナンバーは覚えておいでで?」
今回は一階の応接室に招かれたが、前に来た時とは違う部屋だった。
アンティークというのかヴィクトリアン調というのかは解らないが、とにかくヨーロッパ風らしき高そうな家具が配置してある。
「はい。 でも、ええと地名まではちょっと」
「品川でシタね」と美和が言い、「私が調べしましょう」と三田村が立ち上がろうとする。
「三田村さんは安静になさっててください」
止めに入ろうとする透子に、三田村が何でもなさそうな表情を返した。
「この大事な時期に休んでなどいられません。 捻挫なぞ日常茶飯事です」
「ダメですよお。 こじれると後が大変な怪我ということぐらいは分かるハズです」
「わたくしも美和に賛成です。 調査はこちらで行いますのでしっかり治療なさい」
「………」
「………」
言い合っている皆を尻目に、隣室に移った透子が素早くスマホを開いた。