第2章 誰より優しく奪う*
脇から移動して肩を包む手が正面を向かせ透子の無防備な体を晒した。
肩口から鎖骨に繋がる関節の窪みまで、薄肌に降るのはキスの雨。
密やかな戯れを思わせた先程と違い、今の行為は性急で生々し過ぎると思った。
それでも焦りや嫌悪よりも、単に呑まれそうになっている自分に惑う。
「あっ…やあ!」
再び胸先を咥えられ、ビリッと電気を通されたような刺激が走り大きく喘いだ。
「ああっ…な、にっ……これ」
さっきよりも強い。
尖りをゆるゆると食まれ、腿の外側を撫でる手のひらの感触までも腰が浮きそうになる。
「あんなにたっぷりと前戯に時間をかけたんだから当然だろう」
「そん……うっうそ…ぁあ」
「……それはこちらも同じだ。 腹を空かせてるときに、散々雌の声と匂いを振り撒かれては堪らん」
ピン。
唾液で濡れて光る乳頭を、静が指で冷たく弾く。
「!っやん」
「乳輪までこんなに膨らんで…キミは感度がいい。 俺の好みだ」
そんなことを耳元で囁かれ、足先がシーツの上を忙しなく彷徨う。
ちゅくちゅく音を立てて吸われる胸が焦げそうに感じた。
胸からお腹へと手のひらの温もりが移動し、唯一まともに身につけていたショーツへと伸びていく。
彼が触れている箇所の内側が熱く疼いている。
静の手を止めようと、彼の手首をつかんだ透子の力は弱々しかった。
「やっ…む、無…無理…」
すると動きが止み、その代わりに下腹を優しくさすってくる。
「あ……」
不思議と疼きが治まっていった。