第2章 誰より優しく奪う*
勝ち誇ったように見下ろしてくる静が大股で今までいた客間を通り過ぎる。
そこから隣接する部屋の中央にでんと鎮座していたのはやたらと大きなベッドだった。
「ゲストルームとまではいかないが、仕事の合間に休むのに使っている」
「ちょっ…待っ!」
とさりと体を落とされ、体が柔らかに寝台に沈む。
そこに片膝をかけた静がベストを脱ぎ捨て、シャツの襟を邪魔そうにゆるめた。
「最初があれだったから誤解のないように言っておくが。 俺は女性と無理矢理セックスするのは好きではない。 ましてや初めての相手に」
「せ………世間体とか、地位のある人は大変ですね」
その嫌味は透子の精一杯の虚勢だった。
が、次の瞬間にまた顔を赤くして言葉を失う。
静がプツプツと外していくシャツのボタンの布地の隙間から、男らしく鍛えられた胸や腹部を割る筋肉の境界線が覗く。
「それは問題じゃない。 女性関係に対する………矜恃を言っている」
上体を被せてきた静の肩や胸が肌を滑る。
着衣して離れて見ていたときは細身に見えた静の体だった。
それでも距離を狭めると自分とは全く異なることに気付く。
その大きさや硬さ、それから熱さを間近で見て触れて驚き、透子が身をすくませた。
「だから無理だと思ったら言いなさい」
「………っあ」