第13章 Happy and Bad Day*
「バラですか? なんだかトロトロしたお湯ですね」
「乳白色のお湯には癒し効果があるでしょう。 とろみは湯冷めをしないように」
「あんかけの原理ですね」
納得して頷く透子に、桜木がまあ、と明るく笑った。
タオルを外し、屈んだ彼女からは豊満過ぎる胸がぷるんぷるんと揺れていた。
そしてお湯に入っても、なんとそれが半分浮いている。
三田村とは違う意味で日本人離れした肢体に、透子の目が吸い寄せられた。
「桜木さんは力がありそうなのに、とても女らしいのですね。 か、肩が凝りませんか? その」
心地よさげに息を吐き、それから透子の視線に気付いた桜木が視線を下に向けた。
「胸ですか? ううーん、何というか。 ボディービルダーのようには鍛えていませんから。 見せる筋肉と使える筋肉って、実は違うのですよ。 透子様も潜在的には恵まれていると思いますが。 例えばここ」
「っひゃ………」
胸と脇との間を揃えた指先でつつかれ、くすぐったさに透子から変な声が出た。
「三角筋前部といいます。 胸筋と上腕二頭筋を支える筋肉で、肩凝りを防ぎますわ。 それと背筋、併せて支える足腰、と」
至極真面目な表情で語られる桜木の筋肉論に、透子もつい聞き入った。
そして桜木がすんなりした腕を湯から出して伸ばしてみせ、「長期的に鍛えられた筋肉はこうなりますのよ」と突然凹凸が表れた腕はまるで男性の形をしている。
「す、凄いのですね………!?」
感嘆した声をあげ、そこに触れる透子に桜木が笑みを返す。