第13章 Happy and Bad Day*
『別に構わないでしょう。 あの男が会ってくれとしつこいので、交換条件を出したまで。 この際利用出来るものはしないと。 私はこんな理不尽な結末を許す気はありません』
『いえ、お気持ちはありがたいですが。 これは私自身の個人的なことですし、私はもう誰にも迷惑を掛けたくないんです。 桜木さんにも三田村さんにも西条さんにも』
二人は何らかの形で自分の力になってくれようとしていたようだった。
それだけで透子の胸が感謝の気持ちでいっぱいになる。
だからこそ甘えてはいけないと気を引き締めた。
『皆さん、本当にありがとうございます。 年が明けたら私は、早々に新しい住まいを探します。 それまでは皆さんのお仕事に無理のない範囲で、よろしくお願いします』
そう言い、頭を下げる透子にめいめいは複雑な表情を返した。
先ほどのそんなやり取りを思い出しているうちに体が大分温まってきたため、浴槽のふちにお尻を置き、膝下を湯につける。
ただ────策がないわけではない。 と透子は思うも、その道のりは遠く険しい。
それでももっと考えよう。
たとえ彼が他の人を選び、恋人同士に戻るのが無理でも。
何よりも静を救える方法を。 そう思った。
「………」
ふと目線を下にさげると、生まれたままの自分の体がある。