第13章 Happy and Bad Day*
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ここのホテルのお手洗いは二つある。
バスルームにはその内の一つが併設されていた。
そこからパウダールームと脱衣場を通り、バスルームのほぼ中央にある湯船は段差が設けられていて、ここからも都内の夜景が一望出来る。
誰の趣味かは分からないが、浴室に備え付けのスピーカーから響いている年代を感じさせるゆったりした古い洋楽は今の次節にピッタリだと思う。
湯に体を沈めた透子は思わずほうと息をついた。
ホテルで皆と乾杯をし、ご馳走を囲み皆と楽しい時間を過ごした。
ただあれから通話を終えてダイニングに戻ってきた三田村が『年末年始。 静様は横浜のご実家で過ごされます。 そこでは年始の挨拶として、主だった企業が会長を訪ねる風習となっているようです』そう切り出してきた。
『西条という男に私たちもついて行くのはいかがでしょうか? 会長に直談判する機会が出来ます』などと言ってきたので、透子はおおいに狼狽えた。
それを受けて桜木も『あら。 ちょっとした果報かしら』と顎に沿わせた指を沿えて考え深げに目を細めた。
そんな二人に透子が慌てて両手を顔の前で振った。
『私は八神さんに嫌われていますから。 そんなことをすると西条さんが困ります』