• テキストサイズ

琥珀王子と瑠璃色灰かぶり姫

第13章 Happy and Bad Day*




「いえ………それが恋というものなのですよね」

首を横に振って否定する、そんな彼女を桜木がじっと見詰める。

「静様からお別れを告げられても、透子様はそれ程落ち込んでらっしゃならいように見えます」

「実は、はい。 まだ実感が余りなく………でも」

積み上げた何かが崩れた気持ち、というとそれに近いかもしれない。
けれどそれらのピースはまだ床に散らばって落ちている。


静は美和の弟のように居なくなったわけじゃない。
喪失感というよりも、わびしさとか寂しさとか。 今の自分を占めているものはそんな感情に近い。

『父親が今でも怖いのだと思う』

静は自分と別れることを選んだ。

そんな人の言うことをきいて、これから先も、彼はずっと生きていく────……


『貴女さえ居なければ──────……』

こんな時に義母の言葉を思い出す。


『キミは俺の一部だ』

そしてそう言った静の言葉の意味が分かる。

静は似た境遇にあった自分を助けてくれた。
彼とは無関係な事情で困っていた自分に、手を差し伸べてくれた。
それなのに、自分は彼の負担にしかならなかった────そんな結果を認めたくない。 それは透子の決意に似た感情だった。



/ 457ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp