第13章 Happy and Bad Day*
「あの子は帰国子女ですが、昔、アメリカにいた時に火事で弟を亡くしています。 年の離れた、まだ六歳の子だったらしいですね」
「………」
「専門の美和自身に聞いた方がいいのでしょうけど………子供やペットなんかでよくある、分離不安に近しいものかと。 環境が代わり、それで何かが無くなるのは、彼女にとっては耐えがたい」
「そんな小さな弟さんを…お気の毒に………」
いつも明るい美和が。
フレンドリーな性格で人を惹き付けるのに、別れに酷く落ち込むとは矛盾している。 と、そう思う。
「彼女がいつも散漫なのは知人が友人が多過ぎるからです。 ああ見えて、極端に寂しがり屋さんなのですわ」
そう言った桜木がふふと笑う。
面倒見がいい、というと。 透子の目から見ると桜木がそうなのだが、美和も桜木には甘えているようにも見える。
つられて透子も笑いかけたが、ふと今朝のことが頭を掠め、所在なさげに目を落とした。
様子が変わり黙ってしまった透子に、桜木が気遣うように声をかけてきた。
「………最初から静様は心のどこかで、いずれこうなると分かっていたはずです。 お恨みになりますか?」