第13章 Happy and Bad Day*
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ホテルの部屋に戻った透子を待っていたのは………謎の光景だった。
「うわああああん!! お可哀想にい透子さまああ!! お誕生日おめでとうございバス!」
まず泣き喚きながら透子にいきなりタックルをかましてきたのは美和だった。
『だからあれ程、静様にアドバイスしていたのです』
『既成事実を作ればよろしいと』
「ふう………こじれた一端は、青木様たちにもあったのですね────ああ、透子様。 本日はケーキを」
桜木が椅子から首を横に伸ばし、透子に顔を向けてくる。
『今からでも遅くはありませんと透子様にもお伝えを』
ダイニングにいた彼女は国立および目黒の青木と、何やら怪しげな内容をリモートで話していた。
「殺すぞ貴様。 会えば何でもすると言っただろう? そこへ連れて行けと言ってる」
寝室の方角でおっかない言葉を口にしながら通話しているのは三田村らしい。
「ええっと一体。 お祭りか何かですか?」
美和に締められそうな頸動脈を首を傾けて避け、戸口で透子が目をしばたたかせた。
「お祭りというか、本日は透子様のバースデーですし」
『いくら会長とて、寄る年波には勝て』
話の最中でプツッとリモート接続を切り、立ち上がった桜木がふんわり笑顔で透子を出迎える。
「簡単なパーティー料理もご用意したのですよ」
「あ、ああ………わざわざ、ありがとうございます」
透子がダイニングテーブルの上に目を向けた。
そこはカラフルな前菜や、豪勢な肉の塊などの大皿が準備されていた。
「どぉござまあああ……」
美和はなかなか離してくれそうにない。
実はというと、透子は今晩は冷静に考え事をして過ごしたかったのだけれど────どうやらそれは叶わないらしい。