第2章 誰より優しく奪う*
それを他人にこんな風にされて─────なんで私はこんなに?
「し…ずかさ……わ、私…変」
「変になりそうなのはこっちもだ」
視線を下げると、透子を見あげていた静と目が合った。
男性にしては白い肌…その頬にはほんのりと赤みがさしていた。
眇めた目はなにかを堪えているような、それでいていつかみたいに気遣わしげな様子が見て取れる。
隙がないようでそうじゃない。
トクトクと鳴る自分の鼓動がなぜだか静のものと呼応してるように感じた。
我知らず────透子が僅かに開かれた静の薄桃色の唇に指を伸ばす。
「静さんっ…て…綺麗」
心で思った言葉をつい呟いた透子の手を取り、静がその指や爪先にキスをする。
「今頃気付いたのか」
そう言う静が少年みたいに無邪気そうに口の端を上げる。
「キミから俺に触れてくれるとは嬉しい」
「────……」
この人って、時々のこれはわざとなの?
………いつも態度がでかくて嫌なやつならこんな所すぐに逃げ出すのに。
こんなに心臓が苦しくならないのに。
周りが静かなので、自分の胸の音が聞こえやしないかと思うほどだった。
「明朝一緒に庭を見に行こう」
今度は初めて静がにっこりと微笑んだ。
まるで周囲の光を集めたような笑みに、またもや面食らいながら慌てて頷く。
「お、お庭? はい」
彼が立ち上がったときに、自らの衣服の乱れように気付き、それを直そうとする間もなく─────背と膝の裏に腕を差し込んだ静が、透子の体を軽々と持ち上げた。
「ふ…言霊は取ったぞ」
「えっ?」