第13章 Happy and Bad Day*
といっても────自分が彼の声や、たとえ後ろからでも体格や感触などを分からないはずがない。
「………なかなかにいい判断だ」
室内へ足を踏み入れると、大きな窓の斜め上からは朝の陽射しが降り注いでいた。
比較的小規模な会議室の壁に、既に三田村が背中をつけてこちらを見ていた。
「今は貴方様にも謁見禁止ですから」
透子が後ろを振り向くと、珍しくサングラスを掛けていた静がそれを外し胸ポケットにしまった。
「これなら言うことはないな。 勧めたのはキミだが桜木も相変わらずいい仕事をしている。 俺は透子にプレゼントを渡しに来ただけ────……」
話の途中で、透子がつま先立ちに伸びあがり、静の首に両腕を回した。
驚いた表情の静に、三田村がため息混じりに目を伏せる。
「こちらとしては透子様に危険が無ければいいのです────いかがです?」
彼にしがみついている透子の髪に、鼻先を埋めた静がその瞳を細めた。
「約束する」
「………違えなきよう」
三田村が窓を開け、音もなくその場から姿を消した。
それからややあって静が口を開いた。