第13章 Happy and Bad Day*
そこで三田村がスマホの画面を変え、再度透子に向かって見せてくれた。
その写真を見て透子が思わず顔をほころばせる。
「わあ…可愛い。 飼ってらっしゃるのですか?」
彼女が見せてくれたのは、毛が長く白黒のモノトーンが印象的な、快活そうな犬の写真だった。
「私の最愛のメアリーです。 今年七歳になります。 結婚はおろか、雌の犬とは養子を取るのは認められていませんでしょう?」
「………」
その意味を考えつつ、透子はいつかの静の言葉を思い出していた。
『三田村はビアンだから。 性欲を必要としない方の』
………紛らわし過ぎる。
過剰過ぎる愛犬家というだけの話ではないのか。
たまたま雌の。
「確かに私も今年でもう27ですから………それでも、馬鹿馬鹿しいですよね。 突然こんな非常識」
「い、いえ。 西条さんは良い方です。 一度真面目にお会いしてみたらどうでしょう?」
スキャンダルを嫌うであろう西条などの家には真面目な三田村は合うと思うし、子供も可愛がるだろう。
西条は多少変わってはいても、好青年だと思う。
「透子様がそう仰るなら………終業時刻にはまたお迎えに参ります」
会社敷地の前で、曖昧な表情で頷いた三田村と透子が別れた。