第12章 救いとは
「あとはそうだな。 俺からも質問いい?」
「え? はい」
「改めて訊いてみたいんだけど。 さっきみたいな性格のきみが、白井の家で黙ってたのはなぜかな?」
「なぜと言われましても………」
「そもそもなんで田舎からここへ来たの? 話は聞いてるけど、養女になって政略結婚までさせられそうになったらしいよね。 まるで人生を捧げるような真似をしてまで、義母の言いなりになろうとした理由は?」
そういえば、静にも同じことを訊かれた覚えがある。
重い内容でも、気安く話そうと思わせるような、西条にはどこか不思議な雰囲気がある。
「誰かに話したことは無かったのですが」そう切り出し、透子は言葉を区切りゆっくりと、両親の事故や死に際の話を、西条に説明した。
「………それで、私のことを分かってもらおうとしたんです。 中学教師との出来事も誤解だったと。 そうしたら母の最期の言葉を、伝えられるかと」
カウンターで組んだ両手の上に顎を乗せ、口を挟まずに聞いていた西条が頷いた。
「確かに。 最期の話だけなら、下手をするとただの自己弁護になりかねないもんねえ。 もう本人はいないわけだし」