第12章 救いとは
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いわゆる、イケメンというものにも色々いるものだ。
高層ビル上階にある、鉄板焼きステーキ店のカウンターに腰をかけた西条が、自分に送られてくる女性客の視線に気付きニッコリと笑いかけた。
幅広の額にくっきりとした眉、分厚そうな胸板といい、雄独特のフェロモンを感じさせる。
目立つのは静も同じだが、彼の場合はあまり周りには頓着しない。
というより、たまにそんなものと目が合うと、煩わしそうにそれを避ける。
犬と猫みたいだ。 なんて想像をしながら、透子は興味深げに西条を観察していた。
「ん、なに? 白井さんにまで見蕩れられると困るんだけど」
冗談ぽく笑ってくるけど、これも静ならこう。
「俺に見蕩れているのか。 フ…存分に見たまえ」(キメ顔)
で、親しくないか不機嫌バージョンはこうか。
「………顔に何かついているか」(憮然)
仕舞いにふっ、と含み笑いをこぼした透子が「なんでもありません」不思議そうな表情の西条に肩を震わせる。
静に会いたいなあ、そう思った。
眼下に広がる昼間の都心は多少スモッグがかかったようにけぶっていて、夜の様相とはまるで違う。
ランチにしては豪華なコースをいただきながら、透子は静の結婚の話や先ほど京吾と会った出来事などを西条に説明した。
「フーン、結婚。 まあ、俺もオヤジからせっつかれてるからね………静の気持ちは分かるよ」
西条がふう、とため息混じりで同意を示す。