第12章 救いとは
「会長の言葉が冗談か本意かは別にしろ、そんな所に透子様を関わらせようと静様が思うはずがありません。 とはいえ、静様は会長には逆らえませんし」
他人の話だけでその人物を特定するのはどうかと透子は思っている。
そうはいっても、静やエマ、桜木から話を聞くだに、彼の父親とは暴虐で不快な人物だという感想しかない。
「静様は近々、透子様から身を引くつもりでございましょう。 気持ちの上で踏ん切りがついていなくとも、静様は、透子様が目黒邸を出たら、早々にそうなさるつもりと青木様とわたくしは見ておりました。 ですから、それまではお二人を見守ることにしようと決めていたのです」
桜木が話を締めくくり透子がその時思ったのは。
正直に言って、どうしようもない、そんな虚無感だった。