第11章 奪い、与え、守る*
その『元』美麗な造りの顔は痛々しく腫れあがり、片方の目は周囲の皮膚に圧迫されて見えない。
透子が思わず桜木の方に目を向けると、彼女は相変わらずニコニコしている。
何かうすら寒いものも感じつつ、透子が再びモニターへと目を戻した。
「ちょうどペットカメラが設置してあるのは物入れの真横ですね」
そう三田村が説明してくれ、間もなく再び現れた静の姿が映し出された。
何かを抱えて運び出している。
それは動かない、人の形をしていた。
「………っ!! しっ、死っ…!?」
「落ち着いて下さいませ。 その死体というか、精巧な人形…ですが、誰かに似ているでしょう?」
ドキドキ鳴る胸を治めながら透子が観察する。
ええと。 人形は若い女性のようだ。
やや小柄。 で、背中の真ん中までの黒髪、全体的に地味な顔の造りでイマイチ肉感に欠け、肌が白い。
それを椅子の上に運んだ静が自分の膝に乗せ、何というか、とても大切そうに抱きしめては髪や顔に頬ずりをして愛でていた。
「………」
そこでまた桜木を二度見すると、心から同情がこもった表情で透子を見守っていた。
透子は無言でタブレットをトップ画面に切り替えた。
「透子様が会社に出掛けられてから、ちょっとした暇を見付けては静様は、ここでこうして過ごしてらっしゃいます」
「ビスクドールを作成しているフランスの、19世紀からなる名門の職人に作らせたらしいデスよお。 等身大透子様人形」
こんな自分の、大和民族も大概な面相を、見も知らぬ職人の方々にさらして………?
透子は穴があったら入りたい、そんないたたまれない気持ちになる。
ちなみにその人形が身に着けているのは、透子が夕食を作った時に着ていた黒の地味なメイド服だった。
静はさりげなくあれを気に入っていたらしい。