第11章 奪い、与え、守る*
それでも………それなら、なぜ静はわざわざあんな事をしたのだろう? 目を落として困惑している透子に、桜木がフルフルと首を横に振った。
「────実は、透子様がご存じない場所に、静様の別邸があります。 そこは会長はおろか、わたくし達も中へ入ることは適いません」
そう言った桜木が自分の私物であろうバッグから、タブレットを取り出した。
「極秘の機密事項を扱う、静様にとっては重要な場所です。 ところが此度入ってくれた三田村は隠密の名人でして」
「そこにペットカメラを設置する事に成功しました」
三田村が頷いて言った。
「ぺ、ペット?」
「監視カメラの類は静様も過敏で、すぐに気付かれてしまうのです」
「………今、静様がどう過ごされているのか、とくとご覧なさいませ」
ここの人達はのぞき見が習慣化しているのだろうか。
それは脇に置いても、そのタブレットを目の前に置かれた透子が戸惑った。
「で、でも。 そんなものを覗いたりしたら」
『極秘の機密事項を扱う、静様にとっては重要な場所────』
企業の命運を握る情報や、それとも国家の経済を揺るがすような何かがそこに………?
と、透子が想像したとおり、タブレットの画面が切り替ってパッとそこに映ったのは、いくつかのモニターや機械が並んだ物々しい部屋の様子だった。
その中で仕事用の椅子に深く腰かけた静が向こうを向き、腕を組んでいた。
すっと立ち上がり、こちらの方向に彼が振り向く。
「………」