第2章 誰より優しく奪う*
「ああ……これはイギリス人の祖母の遺伝だな。 なぜか俺には強く出たらしい。 狼の瞳がこんな色だとか。 やっと俺に興味が湧いてくれたのか?」
無言でいる透子の顔が赤くなった。
「……あっ」
耳から首すじの髪の生え際に、つつと静の唇が滑っていく。
静の口の隙間からこぼれる息は熱を帯びていて、それは自分にとって嫌なものではなかった。 くすぐったいような恥ずかしいようなそれとも違うような。
「キミは瞳も髪も濡れたように青みがかった黒だ。 その癖にうなじや乳房も透き通るように白い」
「……っ…」
衣服を開かれた胸元にすべらかな彼の指が入り込む。
いちいち感触を確かめるように進む指先は肌を軽く押し、たまに当たる爪先や関節の存在を鮮明に伝えてきた。
「……ここに置かれる深い瑠璃色の誕生石はきっとキミに合う。 美しいものを見たいから俺は贈りたいに過ぎない」
透子を拘束しているものはなにもなかった。
男性の体重も押さえ付ける手も。
なのに息苦しい。
ゆったりと話す言葉。
肌を流れる指先。
そのあとに滑る口付け。
視界に入れていないものに、透子はその場に縫い付けられたように身動きが取れなかった。
「や、八神……さ」
「静と呼んでくれ」