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琥珀王子と瑠璃色灰かぶり姫

第11章 奪い、与え、守る*




「………おかしなものを感じてはいたんです。 ただでさえ心が傷付く様な行為を、よもや大切にすべき相手に対して」

「今の静様には、透子様の傍におられる資格はございませんわ」

「透子様には出来るだけの処置は施しておきまシタ。 離脱症状や妊娠の心配はないハズです。 少量とはいえ、ADHDなどの既往歴もない人間に、アンフェタミンを皮下注射するなんて、医師として許せる事ではありまセンから」

美和が中心になって、ほんの何時間前かに透子の身に遭った事を話してくれた。

確か………意識を失う直前に静の声を聞いた気がする。
美和の話を聞いているうちに薄っすらと、悪夢の内容がだんだんと現実味を帯びてくる。
下腹の内側が重く、動くと鈍い痛みを感じた。

『俺の子を孕んだら、キミはもっと俺を愛してくれるだろう?』

それは彼らしくない、不安げな声だった。
美和から話を聞いても自分に怒りという感情があまり湧かないのはそのせいかもしれない。

「三田村が透子様の不審を気遣って、部屋から悲鳴のようなものが聞こえると、再度透子様を訪ねたのですわ。 そこで倒れられていた透子様が目に入り、静様と一触即発状態に」

「ほぼ半裸で床に倒れている恋人を黙って見下ろしている状況など、尋常とは思えませんでしたから」

それから騒ぎをきいて駆けつけた桜木がその場を収めたという。
その上で、皆を伴いここへ移動した、との話だった。

「それで、皆さんも一緒に? あの静さんがそれを許したのですか」

「ちょっとお灸をすえてあげたのですわ。 ふふ、静様はわたくしには敵いませんから」

お灸、とは。
花弁のような口元を綻ばせる桜木に、三田村がやや遠慮がちな視線を向けていた。




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