第11章 奪い、与え、守る*
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「透子様…」
「………」
桜木の軽やかな声で目覚め、透子が最初に目にしたものは、白磁に金が縁どられた豪華な天井だった。
ギンギラのあれはシャンデリア………だろうか。
「よくお休みになられてました。 水分をどうぞ」
そんな桜木に言われるまま、渡されたペットボトルを受け取った。
こくこく口に流し込むと、スポーツ飲料らしいものがすっと喉を通る。
「ここはどこですか? 私は、一体…」
ひどい夢を見ていたような気がする………沙希と話して寝入ったところ辺りで、自分の記憶が曖昧に途切れていた。
改めて透子が周りを見渡すと、ここの寝室前面はガラス張りのようで、そこにはスクリーンが掛かっている。
明かりがついている今の様相からすると、現在は夜も遅い時間帯なのだろう、と予想した。
透子のいるベッドの横では桜木と美和が椅子に腰かけており、三田村は頭側の壁にもたれ腕を組んでいた。
「しばらくはこちらのホテルから出社なさいませ。 幾らかの服などはお持ちしてますし、足りなければ買い足せば良いのです。 静様の経費で」
「ハイアットスイートはジムもバーも使い放題なのデス! 静様の経費で!」
ヒャッホー! とでも言いたげな美和のテンションである。
そんな高級ホテルのスイートとは何事だろう。 しかも静の財布で。
「すみません、なぜそんな所に私と皆さんが集まってるのですか?」
事態が呑み込めない透子に、三田村が涼しげな瞳を曇らせる。