第11章 奪い、与え、守る*
誰かと話したい。
彼と関わりの少ない誰か………と、スマホを取り、透子はアドレス帳を開いた。
「はい。 あら、もう透子ちゃんと話す機会はないと思ってたわ。 どう? 元気」
「ご無沙汰してます。 咲希さんは、お元気ですか」
「うーん。 まあ、アタシはね。 あれから色々あって、一人暮らし始めたから家の事は知らないけど」
「あの家を出たんですか?」
「元々不便だったもの。 家を継がないなら自由にしていいハズだわ。 就職も気にしなくて良くなったし………ま、棚ボタってやつよね」
激昂しやすいわりにはカラッとした人柄だ。
やはり咲希はどこか憎めない所がある。
それでも忘れていたが、咲希も八神の世話になる人間だ。 ならば頼れないことに透子が気付く。
「透子ちゃん、彼とは別れたんでしょ?」
「え?」
「アタシもパッと見で最初だけ騙されかけたけど、あの静って人、異常者だもの。 無事なら良かったわ」
「い、異常?」
確かに色々な意味で普通ではない、そこは透子も否めない。
それでもまるで彼が犯罪者みたいな沙希の物言いだ。
「今だから言うけどちょっとだけ、彼から離してあげようって気もあったのよ。 アタシとは似て非なるものだけど、彼って、主従でしか他人と付き合えないタイプでしょ?」
「主従? 何でそんなのが分かるんですか」
「鈍いわねー。 似て非なるものって言ったでしょう。 透子ちゃんなんて、いかにもカモられそうだもの。 逆らったり口答えして、酷い目に合わされた事はない?」
心当たりがあり過ぎて、沙希の言葉に逆に驚いてしまった。