第11章 奪い、与え、守る*
「去年みたいに美和からMRI強請られるよりは安いものだ。 では今から業者に連絡を入れておこう」
なぜ個人がMRIを?
確かあれって何億とかする代物じゃないんだろうか。
その発想も大概おかしいと透子は思った。
「老後の開業準備にしようと思いまシタのに」室を出て行く静の後ろ姿を見つつ、美和が残念そうに呟いていた。
「………に、しても。 最近の静様は変ですね」
「デスよねえ。 情緒がどうも不安定というか」
部屋の出入り口を見やりながら、桜木と美和が顔を見合わせる。
どうやらその辺りの事は彼女たちも気付いていたらしい。
「さっきも、『透子の水着とは、なんという素晴らしいアイデア………』なんて、また嬉し鼻血でも噴きそうなものを」
「デスデス。 それどころか『フフ……透子との子供達ならば、とても一人や二人では。 50mプールは必要になるな』なんて、セクハラじみた妄想しそうなモノを」
「逆にそっちの方が情緒不安定なんじゃないですか」
「仕方ないのですわ。 透子様は静様の初めての恋人なのですから、多少キモかろうとも」
「………え?」
いかにも女性慣れしてそうな静がまさか、と透子が目を見張った。
「留学先ではそれなりに女性関係はあったらしいですケドお。 いつも休暇に帰国してたのは、大体それで終わりにシタいって思惑もあったんデスよねえ」
「その辺りは女の敵と言うべきなのかしら。 それでも会長よりは………ああ、これは失言ですね。 失礼」
「とはいえ、ワタシたちの事はとても大事にしてくれるので、ボスとしては文句はないワケで………透子様?」
やっと、透子は腑に落ちた気がした。