第11章 奪い、与え、守る*
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一昨日の出来事だった。
西条の会社での、OJTの二週間も無事に終了しつつあった。
来月辺りには目黒邸を出るという話を、透子がみんなに向けてしていた。
主に来客用に利用している談話スペースは滅多に使われないため、ここの従業員の彼女たちとお喋りをして過ごす事もある。
その場は青木と三田村は外していて、休日の暇つぶしなのか珍しく静も混ざっていた。
「まあ。 ずっといらっしゃればいいのに」
と、まずは桜木が残念がって言う。
「と、いいますかあ。 ワタシはもう、ここに住まわれるのかと思ってマシた」
「ありがとうございます。 そもそも落ち着くまでというお話でしたから」
何者でもない自分がいつまでも居候する訳にはいかない。 『目処がついたらいつでも出ればいい』 静も最初にそう言っていた。
「そうですよね」という意図で静の方に視線を向けると、「ああ」と彼が頷く。
「そういえば、一昨日西条と会ったが。 透子は呑み込みが早く、よく勉強をして来てくれたと現場が言っていたと褒めていた。 あれならばすぐに戦力になるだろうと。 俺も鼻が高い」
そう言われて透子はホッとした。
この件では恩人にも近い静の顔を潰さなくて済んだと思ったからだ。
「透子様の知能指数は実はワタシに匹敵するレベルなのデス!」
美和が得意げに主張を加えた。