第11章 奪い、与え、守る*
ぱく、とひと口小鉢の小芋を口にし、「ん?」と呟いて隣の和え物に手をつける。
お味噌汁の椀を傾け、モグモグと無言で食べ続けている。
箸を持つ所作まで絵になる………食べ方が綺麗なのもあるが、この人の場合は。 ちょっとの間つい見蕩れていると、透子に向かってお茶碗を差し出してきた。
「お代わりですか?」
口を動かしながらコク、と頷かれ、今度は可愛くてキュンとなった。
これが母性本能というものだろうか。
それからも彼の箸は休む事なく進んでいく。
「うちの米はこんなに美味かったか」
「土鍋をお借りしたんです。 私、炊飯器を使った事がなくて」
「なぜ?」
「いい物だと高いですし、土鍋は他に色んな物も作れますから」
「必要は発明の母というが、貧乏というのも功名なのだな」
感心した表情で言う彼には悪気は無いらしい。
「フム…出汁も丁寧にとってあった。 これなら金を出してもいい」
静が箸を置き、あらかた彼が平らげたお皿を片付けながら透子がふふ、と笑った。
「ご馳走様だけで良いんですよ」
「………」
返事がないので不思議に思い、ふと彼の方を振り向く。 すると顔を背けた静が「風呂に入ってくる」と席を立った。
「何か悪い事を言いましたか? あ、お茶は」
彼は何も言わずにダイニングルームを出て行った。
戸惑った透子が青木の方を見ると、糸目の端を下げ、複雑そうな顔で戸口を見ていた。