第11章 奪い、与え、守る*
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日没から間もなく、晩秋の長い夜が始まろうとしていた。
「夕食は軽くでいい。 透子は風呂でも入っているのか」
「………と、いいますか」
ダイニングチェアに腰をかけた静が、少々困惑顔をしている青木の視線の先を追う。
「静様。 お帰りなさいませ」
他の従業員と同じく黒の地味なメイド服に身を包んだ透子が、ワゴンを運んできた。
「───────……」
驚いてる、驚いてる。
「お口に合うかどうかは分かりませんが、たまには趣向を変えまして」
和え物や煮物といった料理を静の前に並べながら、いつもの食事のように料理人を真似、一品一品簡単な説明を加えていく。
「………何の遊びだ?」
若干笑いを堪えた静の声を久しぶりに聞いた。
ちなみに服は美和から借りたものだ。
桜木のは胸が余り過ぎるし、三田村のものは丈が長すぎて、パンツが袴みたいになってしまう。
「遅い食事ならば、消化の良い物をと思いまして」
「これをキミがか? しかし俺は、手料理に有難がる性格ではない。 プロが作ったものに勝るものはないのだし」
相変わらず可愛くない。
まあ、正論だけれども。
「そうおっしゃらずに」
無理やりと引きつった笑顔を作り、心の中で早く食えと促す。
「大体キミには他にもする事が」