第2章 誰より優しく奪う*
「関係ない?」ソファに肘を置いていた静が眉をあげる。
「俺は無関係の人間に時間を使わない。 少なくとも今の時点では、キミは俺の見合い相手だろう」
見合いなんて形式上だ。
そもそもこの人は最初から居なかった割には距離感がおかしい。
彼の言うとおり義母が騙し討ちをしたとして、
嘘の見合い→誘拐→暴行未遂→また嘘の誘拐←イマココ
後者の方が悪質に決まってる。
それで今は自分の身の上を尋問されてるときた。
ここに来て何度目かの呆れたため息をつく。
「貴方って、友達がいないですよね」
つい、こんな嫌味も言いたくなる。
「友人? そんなものが必要があるのかね。 在学時代ならまだしも大人の世界で 」
「お見合いの時にいた男性はそうじゃないんですか?」
「は……あれが? うちの会社から相応しい人間を選んだだけだ。 いかにも先方から断られそうな」
「最低ですね」
人を人とも思えない発言。
見合いの彼に対し、微かな親近感を抱いていたせいで余計にカチンときた。
「強制はしていないし、それなりの報酬も払ってる。 彼の事情も組んでのことだ」
透子の非難になんのダメージも受けてない様子で、ティーカップを口に運んだ静はしばらく黙っていた。