第10章 琥珀色の闇*
「どうもしない。 というか、出来ない。 ただ子供は無事に戻るから安心しなさい。 日時については確認をしておくから、その時には宿泊先に戻るといい」
それを聞いて、エマが若干ホッとした表情をした。
「もしもエマさんが不安なのでしたら、それまでここに居てもらっていいですか?」
「………好きにしたまえ」
エマの顔を伺いながら静に断りを入れた。
お節介かとも思ったが、慣れない国でホテルに一人で待つのは辛いだろう、と考えての事だった。
「あ、ありがとう。 アンタに迷惑かける気は無かったんだ。 ただ日本に来て、アタシに優しい言葉をかけてくれたのは、アンタだけだったから」
「透子です。 私もお世話になっている身ですけど、ここの皆さんは良い方たちですよ」
「キミの人たらしにも困ったものだな」
優しい口調で声をかけられるも、透子はそれには応えなかった。
車が目黒邸の前で停車し、三田村が気を使ってか、「先に戻っています」とエマと一緒に下車をした。
「ゆっくり話したいところだが、これからまた社に戻る」
「ご自由に」
短く言い、彼女らのあとに続き車を降りようとした透子の腕を静が取った。
「無理に抱きでもすれば機嫌を直してくれるか」
「そんな事をされる位なら出て行きます」
寂しげに透子を見る静の表情が疲れてみえる。