第10章 琥珀色の闇*
車内での四人はしばらく無言だった。
ずっと透子が静にそっぽを向いていて、静の方も決まり悪げに車窓へと目を泳がせていた。
三田村とエマもそんな二人から何やら不穏そうな空気を感じ取り、押し黙っている。
「事情は分かっている。 そのエマとやらがなぜまたうちに来たのかは知らないが」
最初に口火を切ったが厄介な、とでも言いたげな静の口調だった。 そんな彼の態度が透子の癪に障った。
「さらわれたのは異母といっても、まがりなりにも、静さんの弟さんじゃないですか」
「違うな」
車窓に顔を向けたまま、静はそれ以上話そうとしなかった。
何か事情があるらしい………事は分かる。 もしかして踏み込んで欲しくないのかも知れない。 それでも納得がいかなく、透子が口を開く。
「他人の事は何でもかんでも調べる癖に、ご自分の事は隠すんですね」
「その通りだろうが、それが何か」
透子の胸がズキッと傷んだ。
見えない壁のようなもので隔てられた気がした。
「………分からないんですか? それは、私を信用してないという事です」
隣で俯いている透子をちらと見た静が、軽く息を吐く。
「最近、時間が取れなかったのは悪かった。 キミの誕生日とクリスマスに休暇を取ろうと仕事を詰めていて」
話を逸らす静に、透子が彼の言葉を遮った。
「エマさんの件はどうするんですか」