第10章 琥珀色の闇*
「………ん? 今度は私の────はい、静様。 ええ、ご心配なさらず。 ご一緒です。 先日の女性と三名で駅近くのカフェに」
三田村がそのまま話し始めた。
耳についている小さなイヤフォンが通信機だろう。
必要以外は外していたが、静も似たようなものを持っていた。
それにしても、なんでいきなり怒鳴られなければならないんだろう。
こちらの話も聞かないで────とはいえ。
不安そうな面持ちで透子と三田村を見詰めているエマを見ると、感情的になった自分を後悔するのも事実。
今はこの人の力にならなければいけないのに。 と、透子は恥じ入った。
「はい。 大丈夫でしょう、この人通りですから。 了承しました」
通話が終わった三田村がまずは透子に顔を向けた。
「静様曰く。 白井家の件、それからこの女性の件。 これらが片付くまでは、透子様は外に出ない方が良いと判断されたとの事です」
「いくらなんでも、大袈裟です」
「申し訳ありませんが、私も静様に同意です。 白井家の事では静様が恨みをかっているでしょうが、今今は透子様は静様の弱み」
冷静に事を話す三田村に耳を傾ける。
「エマさんの事は八神家の恥部でしょう。 それはいいにしても、当初私にも分かりかねましたが………子供をさらうような輩が相手ならば、その場にいた私達は今は、軽率に出歩かない方がよろしいかと。 静様はお父上がその様なお人柄とご存知の様子でした」
「………」
それならそれで説明をしてくれれば。
いや、そんな子供じみた意地は脇へ置いて。 透子が二人に向けて顔をあげた。
「すみませんでした。 では、邸に戻りましょう」
「ああ、その必要はありません」
すぐ傍でエンジン音が近付いて来、リムジンが三人と離れた横に停まる。
窓を開け、顔を覗かせた静がまたもや不機嫌そうに眉を寄せ、やや大きな声を出した。
「────そこの、やたら悪目立ちしてる女ども。 送るからさっさとまとめて乗りたまえ」