第10章 琥珀色の闇*
「貴女が望むのは子供の認知ですか?」
三田村に訊かれたエマが顔をあげた。
今日は殆ど化粧もしていなく、年相応に若くみえる。 咲希ともそう変わらないだろう。
頬を濡らし口元を歪めた彼女が痛々しかった。
「最初はそう思ってた。 でも、一度も会ってくれないなんて、謝罪のひと言も無いなんて、あんまりじゃないか。 それなのに、無理矢理さらってかれたアタシの子は? あの子は何をされてる?………本当に返してくれるのかい。 警察に行こうにも、ここは日本だし」
「………透子様。 私は」
切れ長の瞳を細め、三田村がテーブルの上で拳を握る。
「はい………私も三田村さんと同じ思いです。 ですが私は、静さんのお父様とは面識がありません。 静さんに訊くしかないでしょう」
青木が夕方に会議が終わると言っていた。
と、バッグの中に手を入れる前に、スマホのバイブが振動していたのに気付いた。
「あ、静」
着信を押して言いかけるも、返ってきたのは突然の静の怒鳴り声だった。
「キミは何をしてる! 勝手に外に出るな」
「静さん、でも今私、エマさ」
「駅の近くか? リングもノイズで拾いづらいと青木も困っている。 すぐ家に戻れ」
「──────……」
「分かったか透」
ぷち。
「透子様? 静様は何と」
「えっ!?」
いきおいで思わず終話を押してしまった。
そして気付けば指輪も外してバッグの中に入れている自分にハッと気付いた。
「す、すみません。 つい」