第10章 琥珀色の闇*
「エマさん! どうしたんですか? お子さんは?」
透子が彼女の元に走り寄った。
「良かっ……た。 アンタに…話に、行こうと」
空色の瞳に、見る間に水膜が張り、エマはその場で顔を覆ってしまった。
道の往来でいきなり金髪美人に泣かれた透子が大いに狼狽える。
「な、何があったんですか?」
「透子様。 その女性は先日の」
「あわっ。 み、三田村さん!?」
スイッと二人の傍に寄ってきたのは三田村だった。
「青木様に透子様の護衛を頼まれ、追ってきましたが何やらやんごとなきご様子。 いかがいたしましょうか?」
「………とにかく、落ち着ける場所に」
「ならば邸にお戻りを?」
「いえ。 すみませんが、そこのカフェで」
強気そうな人が人目もはばからず泣いている。
もしもその理由が八神の家がらみだとすると、彼女を家に連れて行くのは、何となく良くない気がした。
手近にオフィスビルの隙間にあるオープンカフェで、めいめいが席につく。
多少落ち着きを取り戻し、そこで話してくれたエマの内容は以下の事だった。
青木や美和のはからいで行なった子供の鑑定は、間違いなく静の父親────八神京吾のものだったと。
その後、エマの宿泊先のホテルで突然八神の関係の複数の男が押し入り、彼女の子供を取られた。
『二日で返す』そう言われた、と。
「八神はアタシと会う気はないと、正当な養育費は払うとの伝言だけで。 アタシがここに来たのは………そんな目的じゃない。 仕事だってしてる」
透子には慰める言葉が見つからなかった。