第10章 琥珀色の闇*
最近は寝ている時にベッドに潜り込み、気付かないうちに出て行く日もある始末。
彼がゆっくりここで夕食を取る事などまず無い。
いくら寂しいと思える相手が出来て嬉しいとはいえ────不機嫌さを隠せない透子に、青木が困った顔をした。
「ですが最近は、ここの辺りで暴漢もありましたし」
「自分はしょっちゅう居ないのに、他人の行動を制限するなんて。 それはおかしいと思います」
自分は間違った事は言っていないはずだ。
「あ、透子様!」青木が呼び止めようとするのもきかず、透子はストールを羽織り早足で玄関口へと向かった。
「相変わらず横暴というか上からというか」
ブツブツ文句を言いつつ歩道を歩く。
買い物の他に、会社への道も確かめておきたい。
「………もうじき、クリスマスだし」
だからって何てことはないけど、なんとなく、いちおう。
イギリスのクリスマスはアットホームではあるけれど、とても煌びやかに家や街を飾るらしい。
父母が生きていた頃は家のクリスマスといえば、教会での礼拝のイメージしかなかった。
静はどんな風に過ごしてきたんだろう?
そして、どんな風に過ごすんだろう?
それから────……
閑静な住宅街を通り過ぎ、チラホラと洒落た飲食店や美容院などが多くなってくる。
駅周辺に近くなるとショッピングビルや近代的なオフィスが立ち並ぶ。
そんなものがまだ珍しく、キョロキョロ周りを見渡しながら歩いていた透子に。
「あれ? アンタ」
つい数日前に聞いた声だった。